SK200801002925 |
〈観光〉(ツーリズム)・〈自殺〉(タナトス)・〈恋愛〉(エロス) : 中谷孝雄「春の絵巻」に表象された〈京都〉 (京都における日本近代文学の生成と展開) |
Tourism, Thanatos, and Eros -The Kyoto of Takao Nakatani's Haru no Emaki |
中谷孝雄「春の絵巻」(「行動」一九三四年四月)は、京都を舞台に行動する学生が主人公であることから、従来から作家の伝記事項に還元する読みが、研究の磁場を形成してきた。本論では、そうした作家論的解釈では見えてこない視点を探っていくため、分析の視点を作品舞台となった京都(嵐山、京極、岡崎など)に向ける。そして、作品に織り込まれた〈都市〉を解読することで見えてくる「春の絵巻」の新たな断面を追究していく。考察から見えてきたのは、第一に「春の絵巻」が読者の〈観光〉の欲望を刺激する観光情報誌(ガイドブック)の役割を担わされたテクストであったということ。そして、第二として主人公が経験する友の〈自殺〉や、自身の〈恋愛〉体験が、当時の〈青年〉につきまとう〈憧憬〉/〈不安〉を読者に喚起させる装置として働いていることであった。この結果は、「春の絵巻」が単純に作家の〈青春〉を描き出した自伝的小説という枠組みを越えて、作者が意識的に"時代の要請"を織り込む形で世の中に送り出した野心的なテクストであったという視点で見直すことを可能にするものであると言えるだろう。 |
Departmental Bulletin Paper |
日本語 |
渡邊浩史 |
佛教大学総合研究所紀要 |
佛教大学総合研究所 |
13405942 |
2008(別冊) |
123 |
139 |
2008年12月25日 |
https://bukkyo.alma.exlibrisgroup.com/discovery/openurl?institution=81BU_INST&vid=81BU_INST:Services&rfr_id=info:sid%2Fsummon&rft_dat=ie%3D21296696510006201 |
https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/SK/2008/SK20081R123.pdf |
https://archives.bukkyo-u.ac.jp/repository/baker/rid_SK200801002925 |
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