5世紀頃の訳とされる『抜除過罪生死得度経』(T1331)は、現存する最古の(薬師経)となっており、誓願の一部に他とはまったく異なる内容が説かれるなど、初期の(薬師経)を知る上で有効な資料として注目されている。今回は本経の和訳を行い、訳注には年代の明白なつの漢訳(T449: 615年, T450: 650年, T451: 707年)を中心に、本経とのあいだに見られる異同を示す。(薬師経)は比較的分量が少なく、全体像の把握が容易であり、年代の明らかな漢訳が複数現存することから、諸本対照によって経典増広の痕跡を辿り易く、どれほどの年月の幅で、どのように発達したのかを研究することで、浄土経典の発達傾向を示すモデルケースとして提示することができる。本稿はその研究の前段階として和訳と注を作成する。 |