DB005100011500 |
縁起経釈にみられる経部的要素 |
Sautrantika’s Elements in Pratityasamutpadavyakhya |
経部(Sautrantika)の形態を解明するためには、経部の思想を抽出し、体系化する必要がある。しかし、経部は有部の異端派としての位置づけであることから、彼らの思想の多くは有部の論書の中に断片的に引用されるに過ぎない。そのため、資料的な限界もあって、経部の思想を体系化することは困難を極める。ただし、経部所伝と呼べるテクストも少なからず存在する。たとえば、馬鳴の『サウンダラナンダ』や『ブッダチャリタ』、クマーララータの『喩鬘論』、ハリヴァルマンの『成実論』、そして世親の『成業論』等である。そして、近年では松田(1982b)によって、世親の『縁起経釈』もまたこの経部所伝のテクストとして位置づけられるという仮説が提示された。ただし、その後、この松田(1982b)の仮説を検証した研究はなく、ただ漠然と『縁起経釈』が経部所伝のテクストとしてみなされているのが現状である。そこで本稿では、松田(1982b)の研究を受けて、『縁起経釈』が果たして経部所伝のテクストとして位置づけられるのかを『縁起経釈』の全体にわたって精査し、経部の思想との対応関係を検証した。そしてその結果、『縁起経釈』には、形色の極微、心不相応行法、無表の否定や、四大種の共存や、過去の業からの生起、煩悩の未断・已断、随眠の解釈、論よりも経を重視するなどといった、経部のものとされる思想と共通する思想が多く説かれていることが明らかとなった。以上のことから、松田(1982b)の指摘するように、『縁起経釈』は数少ない経部のテクストとして位置づけられるということを証明した。 |
経部, 『俱舎論』, 『縁起経釈』, 世親 |
Departmental Bulletin Paper |
日本語 |
中島正淳 |
NAKAJIMA Shojun |
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 |
佛教大学大学院 |
18833985 |
51 |
27 |
70 |
2023年03月01日 |
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https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/DB/0051/DB00510L027.pdf |
https://archives.bukkyo-u.ac.jp/repository/baker/rid_DB005100011500 |
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