元明即位の一因を日本古代史料に散見する「大刀自」を尊称に持つ女性に焦点を絞り、彼女達の社会的役割と地位を考察した。その結果として「刀自」が族長的機能を保持することに附加して、家長的性格を表出したのが大刀自であったと言えよう。大刀自とは貴族層内部に於ける個人単位の「家」概念を基因として確立した地位である。実質的には「公的家」に於ける家の継承とその管理に深く関与する権利を保有すると考えられる。この様な「大刀自」の権能と役割を元明女帝にも適応することを試みた。元明即位の可能性を「皇太妃」の権言と天皇家の大刀自=家長としての主導権によるものと推察する。 |