本稿では、児童養護問題の社会的要因をとらえる基礎的な研究として、その典型である児童虐待事件を取り上げ、虐待が発生した家庭の社会階層および居住地域(市区町)の特徴を明らかにすることを目的とする。具体的には、過去6年間に報道された児童虐待事件302件をもとに、統計・資料を手がかりに実証的な分析をすすめた。その結果、虐待事件が発生した家庭の社会階層は、雇用労働者層の中でも不安定雇用者層が多く、失業者を含む無業者層と合わせて生活基盤が「不安定」な階層が多数を占めていた。また、その家庭が居住していた地域(市区町)の特徴は、主に人口密度が高く世帯数が増加傾向にある雇用労働者とその家族が暮らす「過密」な都市・住宅地域であることが明らかになった。 |