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川端康成『古都』論 : エーリヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』との類似点 |
川端康成の作品『古都』は、昭和三十六年(一九六一)十月初筆、三十七年一月完結。「朝日新聞」連載百回の小説であり、最初から構想を練ったり結末を考えたりしていない。思いついたように、双子の姉妹を主人公にした作品で、川端にしては淡白な着想であるので、「どこかにヒントがあったのでは?」と考えた。前年(一九六〇)には国際ペン大会(ブラジル)に出席。その五年ほど前から、海外との交流が盛んになっているが、英語は解さない。エーリヒ・ケストナーの作品『ふたりのロッテ』は、映画化されヒットしている。十年後(一九六〇)、国際アンデルセン賞を受賞。翻訳され海外に流布。『古都』は翌年の執筆である。筆者は以前にミュージカル「ふたりのロッテ」を観劇したが「似ている!」と直感。類似点として、始めにスミレ(すみれ)が描かれている。双子の姉妹、九歳のルイーゼ(ウィーン住)とロッテ(ミュンヘン住)も、二十歳の千重子(中京)と苗子(北山)も、不幸な生い立ちで互いに未知の人であった。菫は文字の緒として出会いを象徴している。衝撃の出会いは夏。生地は、ルイーゼとロッテはドナウ川のリンツ。千重子と苗子は清滝川の北山杉の里。二人とも実の両親とは無縁であり、川は人生そのものと言える。金銭感覚として、家政婦のつける家計簿をチェックするロッテ、番頭にまかしていた帳簿を調べる千重子。川端にしては珍らしい設定である。恋については、二人が区別できない男こそ気のどくだとキリアン校長先生がいう。千重子と苗子が一つになってしまう秀男の迷い。二人は一人の幻となる。川端は七十三歳(一九七二)で自死。ケストナーは七十五歳(一九七四)で死去。共に七十歳代まで戦時を生き抜いたペンマンである。 |
Departmental Bulletin Paper |
日本語 |
廣島よし子 |
京都語文 |
佛教大学国語国文学会 |
13424254 |
24 |
272 |
287 |
2016年12月20日 |
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