KG003100011791 |
大伴家持の「春日遅々」歌:『毛詩』からみる春愁の所在 |
大伴家持の作である『万葉集』巻十九の巻末歌は、うららかに照る春の日に雲雀が空へ駈け上がる景から、独りで物思いをする悲しみの情が捉えられており、近代的な孤愁を詠んだ秀歌と名高い。 その左注には、『毛詩』の一節「春日遅々」が引用されている。ヒン風「七月」の『毛伝』及び『毛詩鄭箋』には、春は女が悲しむ季節であると説かれており、家持もこの解釈により「春日遅々」を理解していたと考えられる。一方、家持における〈春の悲しみ〉は、友である大伴池主の不在と強く結びついていた。家持は左注で『毛詩』を引用することにより、恋愛詩歌の型として内在する〈春を悲しむ女の情〉を、「心悲し」「独り」の歌表現においては、友の不在により春の美景を楽しめないこととしての〈春に友の不在を悲しむ男の情〉を提示している。この両者を止揚することで、男女の個別性を超えた、家持の心の景としての孤独と春愁を描き出そうとした作品であったことを論じた。 |
Departmental Bulletin Paper |
日本語 |
大谷歩 |
京都語文 |
佛教大学国語国文学会 |
13424254 |
31 |
111 |
128 |
2024年02月29日 |
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