KG003100011796 |
董黯図溯源:ガンダーラ仏から孝子伝図へ |
仮名本曾我物語三「臣下ちやうしが事」に載る、燃燈仏授記(布髪)の話や、三国伝記四・16等に載る指鬘外道(アングリマーラ)の説話の背景にあった図像の間には、壮大なスケールのドラマがあったらしい。孝子伝図の董黯図は近時、最も解明の進んだ図像である。十七場面に及ぶその第十三図には、思案する董黯の図像が描かれ、また、それに先立つ第七図には、王奇による黯母暴行図が描かれているが、例えば前者は、周知の仏像の一、半跏思惟像とそっくりで、また、後者の、王奇に髪を?んで引っ張られ、床に平ひれ伏ふす黯母の姿は、燃燈仏授記図(布髪図)における、燃燈仏の前に平伏して自分の髪を地面に布くメーガ(前世の釈迦)の姿形そのものである。それら半跏思惟像や燃燈仏授記図などは、いずれも古代印度、ガンダーラにおいて考案、創始された固有の図像として、中央アジアのシルクロードを経由し、或いは直接、中国へまた、日本へと伝わった。一方、それらの両図は、例えば雲岡における豊かな作例にも恵まれている所から、雲岡を通じて、孝子伝図(董黯図)へと転用された道筋が考えられるのである。しかし、例えば後者の場合、前世の善行譚である布髪(図)が悪行譚、不孝譚としての黯母暴行図へ転用される、動機が見当たらないという難点が、考証の前に立ちはだかることになる。その難点を解消するのが、悪行譚、不孝譚として布髪図を転用した、アングリマーラ帰依図の存在ということになる。小稿は、そのような董黯図二図の成立の背景に、ガンダーラから直接、中国への文化的伝播があったことを明らかにし、孝子伝図成立の一要素としてガンダーラ仏がモデルとされたことを、始めて論証しようとするものである。 |
Departmental Bulletin Paper |
日本語 |
孫彬 / 黒田彰 |
京都語文 |
佛教大学国語国文学会 |
13424254 |
31 |
211 |
257 |
2024年02月29日 |
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https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/KG/0031/KG00310R211.pdf |
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