この論考は,宗教という人の営みの考察を目指すものとしながら,主題として,民俗信仰と呼称されるものを考察していくための視角を提示するものである。まず宗教に関連する視角の中から「聖なるもの」「救済」「創唱宗教と民俗信仰」という論点を選択し,先行研究について論じながら,その視角についての論を展開する。「聖なるもの」は宗教学で主要なテーマとして語られるものであり,社会学としてはその業績を主に用いながらも,留保事項とする問題でもないとした。「救済」については,救済宗教と「癒し」という概念を本稿では論じ,ユーザーへのアピールの道具として,また重要な機能として考えていくべきではないかと考えた。「創唱宗教と民俗信仰」という視角については,古い考えかたであるが,「私の信仰」を考える際の理念型として用いることはできるだろう。以上3つの視角を述べた上で,民俗信仰の理解には,個別的な事象を丁寧に理解することと,そして,社会的な文脈でとらえることが重要なのであるとした。 |